講師 坂元 保氏
株式会社 丸屋神奈川製作所 社長
株式会社 エム・ケー・エス 社長
全国中小企業融合化促進財団 理事
横浜市工業会 異業種交流特別委員長
横浜市、産、官、学交流ネットワーク機構 委員
(平成12年2月24日 調布市文化会館 たづくりにて講演の抜粋)
主催 異業種交流グループ シンス91
協賛 調布市商工会、CIC、シック88
私は評論家ではなく毎日仕事をしている現役の社長です。
実際の仕事をやった経験のない評論家には事業を起こすことはできない。私は評論家ではないので、具体的にお話をしていきます。
【私の事業】
私は、商社マンから転身し、乾燥機の応用例をひっさげて、昭和39年に自分の家を売って会社を起こして以来赤字を出したことのない経営を続けている。
(始めて間もない)石油ショック当時、異業種交流というのがあって役所の敷居が高くないという事があれば良かったのだが、我々の頃にはそういう事はなかったので大変な想いをした。昔は役所の敷居は高かったが今はずいぶん低くなった。中小企業は、情報の集まる役所から良い情報を仕入れて仕事をするべきであると思っている。
私は、自分の仕事を通して、自分の社員を幸福にし、地域社会に貢献して、そして儲かっていれば、(この社会を肯定してくれる政党であれば)どの政党であってもかまわないと思っているが、中小企業政策は不可思議だし難しいが故に、このような(異業種)交流会で情報を得られれば、こんなに良いことはない。
【中小企業国会】
3年前に中米のコスタリカ、パナマとホンジュラスに調査団長で行った。「日本の中小企業の助成策にはどんなものがありますか?」と聞かれた。「私は一言では言えないほどたくさんの助成策があります。」と言った。
こんどの国会は中小企業国会と言われている。皆さんこの政策をうまく利用しようとしている人はおられますか?やった人はいますか?おそらくいないでしょう。故にこういう交流会に出て、調布市の役所が味付けをして、お国から助成を頂く、その代わり我々はうんと働いてもうけて税金をはらう。私のところは34期だが一期も赤字はない。今大企業は赤字で税金を払っていないが、これはおかしい。私は食わなくても会社だけは黒字にしておく主義である。
【バブルの時代と今】
バブルの時代には、銀行が来て金を借りてくれとよく言ったが私は乗らなかった。だからあの時代一銭も儲からなかった。今620社の会の会長をしているが年に20社位つぶれている、ある会社の社長がやってきて大変だというので聞いてみると、株やゴルフの会員権で失敗したという。それならあなたはベンツに乗るのはおよしなさい。従業員がかわいそうではないか。と言っている。
この4月には賃上げがある、このような不況下でも評論家は、年に一回なのだから何とかしなければいけないと言う。しかし、だが、金はない、会社は儲かっていない、従業員は給料を上げろという。皆さんどうしますか?そこで、我々は税金を払っているのだから、常日頃、お国から助成をいただけるような工夫をしていくべきである。
【最初の助成金】
私の会社ではヒータを作っているが、自動機の良い物がなかったそこで横浜市に相談して鉄鋼メーカN社の中央技術研究所を紹介してもらい、4年かかって従来35名の人手がかかった作業を2名で出きるようにした。これで、利益を出せるようになった。このとき自動機を作るための2400万の助成金を頂いて作った。これが10年前のことです。今はもっとたくさん(助成措置が)あります。だから、役所や商工会の人たちが、中小企業総合事業団、中小企業庁の技術課、計画課に行って保護政策、助成政策を聞いてきて、このような交流会で伝えてもらうことで、これを利用して企業を活性化させることができるのです。
【就業規則も作った】
私のいる横浜市には80人のアドバイザーがいる。皆無料で面倒を見てくれる。従業員の教育から商売のやり方まで教えてくれる。
私は15年前、就業規則を作る時も1年かけて作った。社長と、従業員と従業員組合とで作るとどうしても社員は社長の押しつけだと感じる。だから第3者の横浜市の経済局から社会保険労務士を派遣してもらい週に2回会合をしながら作った。これなら公平である。これも無償である。どこの自治体にもアドバイザーはいるはずなので、税金を払っている権利と思ってこれをうまく使ってください。
【物を売るには】
物づくりのプロセスを考える。例えば机がある。これを作るプロセスを考える。材料は石油がある。石油のペレットから板状に押し出すゴムがある。ゴムの成形がある。クロスがある。これらの材料行程を全部考える。しかし、これには物ができるプロセスを解釈できる技術情報あるいは技術を加工する力が必要である。
自分の会社のコア技術のわからない社長はいない。だから自分の会社の製品をどこに売ればよいかをその製造プロセスから考えられるのである。そして従業員にあそこへ行けここへ行けと指示するのである。このように一つプロセス、一つの仕事からいくらでも広げられるのである。だから下請けに徹してはいけないのである。
【下請けにはならない】
下請けをやってはいけない。ねじ一本でもつけて売れ。
2年と景気は続かない。不況だからおもしろい。
今調子の良いところも2年と続かない。良いときに次は何をやるか考えよ。
目先を変えてやらなければならない。
だから全業種を相手に商売するのである。
あっちが悪ければこっち。こっちが悪ければあっちという風にである。
だから利益がだせるのである。
下請けをやっていれば、営業も経理も技術もいらない。だが、これは親企業に頼っているのである。しかし今は大(親)企業もやっていけない。仕事がないのである。
(大企業は日本一である)日本の一番は世界で一番なんだ。それは我々中小企業が応援しているから世界で一番なんです。
日本企業の 99.5% が中小企業。だから中小企業で日本は持っている。
だから意を強くしていいんです。だから下請けに甘んじていることはないのです。
【提案セールスとその知恵】
そして、売るときは、お客には「ウチのこの製品を使えばお宅はいくら利益がでる。」と提案するのである。
かつて、N自動車会社の取り引き口座を得るまで50回、日参した。なんとしても下請けにはなりたくなかったのである。
ちょうど金物バンパからプラスティックバンパに替わるときであった。
金型にヒータを差し込むノウハウを教え、「良かったら口座を取って使ってくれ。」
と言った。そこでの成功の裏に大学の先生の知恵があった。だから産官学が必要。
横浜市に紹介してもらって、大学に行って教えてもらったのである。
今、横浜市では9大学が関わっている。市に仲介してもらって技術の先生を派遣してもらいわからないところを教えてもらえばよい。
【小さな会社で行け】
特別に大変な技術ではなくとも、大企業がやらないことをやる。
また、中小企業は量産ものをやるべきではない。
給料は世界一になった。(人件費の負担が大きいのである)
だから大きくなったら分社すれば良い。
私もある程度大きくなったとき、労使関係が悪くなり、大変なことになった。
大変苦しんだ、その時「元々なにも無かったんだから、ひとりになればよい。」と思ったら気が楽になった。そこで分社化した。
また、お客さんに大きな仕事を出すから規模を大きくしてくれと言われてもつきあうべきではない。時代が変われば仕事も変化する。今は良くてもいずれは競争相手がでてくる。その時に叩かれて、挙げ句の果ては仕事がないということになる。
【データを集め整理せよ】
分社後の仕事は、船の設備の修理の仕事に特化した。大変な仕事なので、やる人が少なく利益がでた。しかし、ドックの仕事は修理期間が短く、部品の種類もたくさんあり、従業員は徹夜に次ぐ徹夜であった。そこで、船の番号と設備の資料をそろえ、入船スケジュールを聞けばその船に使う部材がそろう様に、部品在庫を用意した。1週間のドック入りで2日で修理を終えられるだけになった。今ならコンピュータという良い道具があるがその当時は私の手帳がすべてだった。
【パソコンの利用】
今は20年間のデータを蓄積してあり、お客さんのデータは2秒で出てくる、部品も自動倉庫に多品種の部品をそろえてあり、パート従業員のパソコン操作で瞬時に部品を揃えられる。私のところは17年前からペーパレスにしてある。これからはパソコンが重要。パソコンを使えない人は使えない。他社との競争に勝つためにこうなった。
【価値分析Value Analysis】
あとはVA(Value Analysis)である。
例えば1万円のセンサよりこの750円のセンサではどうか。ただし先のセンサは3年間持つがこれは10ヶ月しか持たない。ということをお客に提案し仕様書に盛ってもらう。
これがVAである。これはビフォアサービスになる。こうすればお客様の信用も増すのである。
【中小企業は実行力】
中小企業はスキマを狙らわねばいけない。
総合商社が紙オムツまでやっているといっても必ずスキマがある。
我々には機動力がある。あっちが(大企業が)3日後に来るのなら、我々は直ぐにでも行けばよい。これは実行力です。ここに商売の奥義がある。
【仕入れは現金】
仕入れは現金でやっている。同業他社より2割やすく入る。材料部品の素材で2割やすくはいる。更に自動化で2割安くできるのである。
【異業種交流のやりかた】
異業種交流(という言葉)は昭和57年から正式に中小企業庁の公文書になった。このとき、最初の32社の会に入って18年、ここまでやってきた。その結果言えることは、行政とタイアップし、黒子になってもらい、各社連携してやっていくのである。
そして我々は工夫するのである。例えばこういう会合にくるとき名詞を100枚持ってくる。また名詞の作りも顔写真やキャッチフレーズを工夫する。
カタログの作りも工夫する。一筆啓上をつける。リピートオーダの返信封筒をつける。
FAX返信用シートをつける。ホームページやEメールアドレスを載せる。など具体的に工夫しアピールするのである。
【これからはホームページ】
また、これからはホームページが大事。ここ数年で商売が一変する。営業はいらなくなる。
お客には技術の打ち合わせに行く。ホームページで営業する。異業種交流でお金を出し合ってでも直ぐにやった方が良い。
お客さんの技術にはこのホームページを実によく見ている人間がいる。この人たちの問い合わせに直ぐ応えてあげることが重要。直ぐカタログを送り、直ぐFAXを送るのである。
今は飛び込みで工場に入るのは難しい。大きい会社は門を入るのが難しい。ちゃんとしないと(約束がないと)入れない。(ホームページはその切っ掛けとなるのである。)その上で、名詞の渡し方、カタログの渡し方一つでも考えねばならない。どさっと一冊のカタログを送るのではなく、相手に応じたカタログを持って行け。リピートオーダや何らかの交渉のできるように考えよ。考える力がなければ営業としてのセンスがないのと同じである。
【情報を加工する技術】
人、金、物に加えて社長には知恵がある。だが、情報を加工する技術がなければやっていけない。そうでなければ21世紀は生きていけない。そのために異業種交流で更にその知恵を磨いて行くのである。
【抜け駆けは厳禁】
こう言うと、異業種交流に入れば会社が活性化して注文がどんどん入ると思うかもしれないが、勘違いしてはいけない。二つ与えて一つ取る。2ギブ 1テイク で行くことが大事。旅行で裸のつきあいをやって懇親会などでうち解けてお互い腹を割って話が出るようになる。これで日本人は知恵が出てくる。
お互いに知恵を出し合うために委員会(分科会)が必要。5社程度が良い。8社ではだめである。事務局を商工会か役所に置き、成功したときのための規約を作って始めるのが良い。抜け駆けは厳禁である。
一つ目は技術仕様は他言しない。
二つ目として分科会を作る。
やり方はいくつもある。
【異業種交流の趣旨】
日本の中小企業は幸福、第一勧銀の調査では、97通りの中小企業の助成策がある。
中小企業総合事業団には技術情報調査士もいるし、中小企業異業種交流財団ではアドバイザーの派遣事業もあり、カタライザーの指導も受けられる。これらは基本的に無料である。
各地の市役所や商工会にいるはずである。そこを通して補助金なども受けることができるのである。その代わり我々は一生懸命働いて利益を上げて地域社会に税金を払えばよいのである。技術がわからなければ大学の先生を呼んできて教えてもらえばよい。
これらが異業種交流の趣旨である。
【みんな仲間ではないか】
異業種交流という制度はアメリカにはない、使いようによって非常に素晴らしい制度である。これを利用しない方法はない。
しかし与えることを出し惜しみすれば、わだかまりがあって上手くいかない。ただ人間を知っただけ、何のために入ったかということになる。
自分で経営の仕方が解らない時は頭をかきながら仲間のわかる人に聞いてみるのである。これを「借脳経営」という。聞かれた人も「何だ」という顔をしないで、教えてあげることが大事。みな同じ友達ではないか仲良くやりましょう。
ありがとうございました。
文責 石原直樹
※文中括弧内は、お話の内容により文責が語句を挿入いたしました。
調布市異業種交流会 cince91 2000.3.8