リトグラフで版に描画する場合には特別な技術は必要としません。紙に絵を描くようにアルミ版に直接クレヨンなどで描いていきます。このページではアルミ版の準備の仕方と、どのように版に絵を描くのかを説明。
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作品サイズ、アルミ版サイズ:
まず、紙サイズとイメージサイズを決め、紙サイズより天地左右5cmずつ大きいサイズのアルミ版を用意します。また、刷りに使用するプレスベットのサイズも確認しておきます。
サイズの順序:
プレスベット>アルミ版>紙>イメージ
リトグラフ用アルミ版:
アルミ版の表面を研磨し石版石の表面のように目立てしてあり、わずかの油性分にも敏感に反応する。この小さな無数の突起がクレヨンなどの油性分と反応し油性インクを引き付け、一方、イメージのない部分ではアラビアゴムと反応し親水性となり、油性インクをはじく役割をする。指先の微量な油分で反応するので出来る限り描画面に触れるのは避けます。
アルミ版をカットする必要がある場合は、裏面から定規とカッターを使う。定規にそって数回カッターで線を刻みをいれ、定規を押さえたままゆっくり数回上下に動かすと裁断できます。版の角は金切り鋏などで丸くカットしておきます。
1) アルミ版の製面:
アルミ版には研磨のときに生じた微量のアク・チリなどが残っている可能性があり、また、研磨してから時間が経と版が少しずつ酸化しています。版に描画する直前にこのアク、チリ、酸化皮膜を明礬溶液で取り除く必要があります。特に細密画を描く場合や溶き墨使用する場合にはアルミ版をこの溶液で洗うことをお薦めします。アルミ版が納まる流しの中で、堅めのきれいなボディブラシで円を描くように明礬溶液で素早く洗い、さらに水洗いをする。水を切り、きれいな紙で水滴を吸収し乾かし、ブラシで表面をきれいにします。
(明礬溶液 = お湯・1リットル + 明礬/焼明礬・テーブルスプーン1杯)
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石版の場合
石版の研磨:
石版の表面に残っている以前刷ったイメージのインクを溶剤(シンナー)で洗い落とした後、研摩します。研磨の出来る流し台に運びますが、石版の移動は二人以上で安全に注意して行って下さい。特に研磨後の濡れた石版はとても滑り易くなっています。
研磨はカーボランダムとラビゲーター(石版研磨用の厚い鉄板に取っ手をつけた道具)を使う。金剛差を使用している学校・工房が多いようですが、金剛砂は石版とラビゲーターの間で比較的早く潰れてしまい効率が悪いのが事実です。
まず、石版の表面を水洗いし、カーボランダム#100(粗目)を少量ふりかけ、ラビゲータをゆっくり回転させながら全面を研摩し、表面に残っていた前回のイメージ跡が無くなるまで何度も繰り返します。次に、カーボランダム#180(中目)で同じように研磨。最後にカーボランダム#240(細目)で仕上げる。
カーボランダムを換える時には必ず石版とラビゲーターに付着しているカーボランダムをすすぎ水で完全に洗い流す。また、エプロンにも粗目のカーボランダムが付着していないことを確かめる。#240で研磨中に#180のカーボランダムの粒が入り込むと石版の表面に円形の傷が付いてしまい、そのまま描画して刷ると、作品にも白い曲腺となって出てしまいます。
また、カーボランダムを換える時には石版の表面のレベルがとれているかを確かめましょう。ラビゲーターを石版の中心で回転させているとその部分だけ研摩され石版の表面がわずかに窪んでしまいます。そのまま刷るとその部分だけプレス圧が低くインクの付きも悪くなります。#100カーボランダムの研磨が終わったら一度石版を乾かし、石版の表面に残っているカーボランダムと石版の粉をブラシなどで落とす。ステンレス製直定規(50cm以上)を石版の上に置き、次に定規の厚みの面(2mmの面)を石版の表面に立て、真横から定規と石版の表面に隙間が無いことを確かめる。また、ロール紙くらいの薄い紙を2cm角に切り定規と石版に鋏み、するすると抜けなければ大丈夫。石版の中心だけでなくいろいろな方向に定規を当てて確かめてみましょう。もし、研摩し過ぎた部分が有れば粗い番号のカーボランダムに戻り研摩し直す。
#240カーボランダムの研磨が終わり、表面に傷も無くレベルがとれていれば、石版の周りの角をヤスリ棒を使い丸くしましょう。しっかり乾かし、描画の出来る場所に石版を運びます。 |
2)版描きの準備
紙・イメージサイズの線を版に描く:
アルミ版をテーブルの上に置き、版上に硬い鉛筆(4H)で軽く紙・イメージサイズの線を書き込む。また、刷る時に紙を置く場所を確定するための見当を紙サイズの左中心と右中心にそれぞれ −・├ (上図参照)を鉄筆で線を入れて下さい。
イメージの周りの余白を汚したくないときには、イメージサイズの外側にアラビアゴムを塗り、イメージ部分も出来る限り直接手で触れないようにします。
下描き:
下描きが必要なときには、チョークまたはコンテで版上に軽く描く。また、トレースをしたいときにはベンガラ紙を準備し、カーボン紙を使う要領でトレースを行う。(ベンガラ紙=ベンガラをアルコールで溶き紙に塗ったもの)
注意:リトグラフでは描いたイメージは刷ると左右逆転します!
イメージ内に文字が入っていたり左右逆転したくない場合は、版に下描きするときトレーシングペーパーを裏返し
て版上に下描きを写します。
描画材:
柔らかくて太い線が描けるクレヨン、グラデーションを出しやすいダーマットグラフ、堅くて細い線を描く色鉛筆(種
類によっては油分が少なくてリトグラフには使えない色鉛筆があります!)を使い分けて描きます。
<左から: ベンガラ紙、溶き墨、クレヨン、ダーマットグラフ>
描画材は表現したい線・面・調子によって使い分けます。これら以外にも版画材料店では米・仏国製リトクレヨンなどが取り揃えてありますので試してみて下さい。クレヨンなどは黒色でなくても使えますが、黒色が描いた度合いが一番分り易いのでなるべく濃い色のクレヨンを使いましょう。油性分が版に反応することが重要です!
- クレヨン、クレパス:柔らかく大胆な線。真っ黒なベタも可。
- 三菱 dermatograph:描いたとおりに版になり、使いやすい。
- 三菱 色鉛筆 polycolor:細い線が描けますが淡い調子は版になりませんので要注意。
- Stones Tusche(溶き墨):水彩のような調子。
3)描画:
紙に絵を描くように描く。
描いた部分を汚さないよう腕木を使うと便利です。描いた部分を消すことは出来ないので慎重に!。また、消しゴムを使うと反対に油分を版上に拡げる結果となるので使わない!
山本氏の共同アトリエ「牛小屋」で制作中の下描きとアルミ版。大きな版を3枚使っているので壁にテープで固定しています。今回使った描画材料はサクラクレヨンと三菱ダーマットグラフ。
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描画を終えたアルミ版:
山本氏が描き終え工房に届いたアルミ版 (1100x860mmx3枚)。茶色に見えるのはベンガラ。

さあ、これから製版を始めます。