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徳島県立近代美術館ギャラリー・トーク
「アメリカ版画の今」

@ 徳島県立近代美術館

8/17 (日) 2008、14:00-16:00
徳島県徳島市八万町向寺山、文化の森総合公園


特別展・アメリカ版画の今 - 5つの工房から

2008年7月19日[土]− 8月31日[日]

展覧会のアウトライン

この展覧会は「工房」という切り口からアメリカ版画の現在をご紹介するものです。工房とは、様々な分野のアーティストたちに、共同制作と表現の可能性を提供する場だと言えます。単に下絵を版画にして印刷する工場といったイメージをはるかに越える、コラボレーションの素晴らしさ、そして版という表現手段の発展性を再認識できる内容となっています。
アメリカを代表する新旧5つの工房それぞれから作家を推薦するという本展の企画は、これまで海外との交流展を盛んに行ってきた「KYOTO版画」と、アメリカの現代版画を先導してきたタマリンド工房との共同により進められました。KYOTO版画は主に関西の作家たちによる自主運営組織であり、去る5月には京都市美術館別館において「日本・アメリカ国際版画展」として開催されました。そのアメリカ部門を巡回する本展は、作家そして工房というアートの現場に根ざしたリサーチの姿勢に大いに立脚するものと言えます。

広がる「版」

出品作品を見渡してみると、いわゆる木版画や銅版画などの技法だけが「版」だという発想をくつがえすような作例に多く出会います。例えば、銅版画工房として出発したポールソンから推薦された、マリーリー・ベンドルフの作品は技法こそ銅版画ながら、イメージの元は作家の出自と切り離せないキルト作品です。紙造形からデジタル・アートまで幅広く手掛けるピラミッドで制作されたマーガレット・プレンティスの表現はパルプペインティングと呼ばれ、紙自体が絵として作られているものです。写真に関連した技術に特徴のあるセグラでは、ジェームズ・タレルによる光をコンセプトとした映像表現が版画化されています。デジタル技術を駆使して作家の発想に応えるソロでは、ケント・ヘンドリクソンによる刺繍とリトグラフを融合させた斬新な作例があります。そして1960年の創設以来、アメリカの版画工房をリードしてきたリトグラフ中心のタマリンドからは、ハン・リュウやジェーン・クイック=ツー=シー・スミスらの、写真のイメージを絵画的に操った作品が紹介されています。これらのみならず、出品作品に共通する大きな特徴は、「版」の技術が柔軟に選択され、作家たちの発想や意欲を何倍にも豊かにしているように思われる点です。日本の版画作家の多くが、独力で版画手法の個性を探求している傾向と比べて、アメリカ版画においては工房という共同体制の中で自分を見つけていこうとする態度が印象的です。

「版画は技法がわからないから鑑賞が難しい」という声を聞くことが少なくありません。また、「これも版画なのですか」というのもよくお受けする質問の一つです。確かに、製版や刷りなどのプロセスを経て生み出される版画の画面には、塗り重ねの筆跡や筆圧などが直接見えることはなく、少しなぞめいた技術の妙を思わせる時があります。けれども考えてみれば、幾多の工夫と洗練が薄い画面の上にたたみ込まれた版画の表現は、筆やペンとはまた違った、一種の作家のタッチであると言うこともできます。版材や手順の特性と取り組む中で作家たちはイメージを絞り込み、そこで捨て去るものがあり、逆にクローズアップされるものがあり、世界に二つとない自分だけの方法論を見出します。その意味で「版」は常にハンドメイドなのです。そして、そのような制作が工房というサポート体制の中で、他者との共感的な試行錯誤を経て、生み出されるというのは、作家にとっては実にエキサイティングな体験であるはずです。版画は時代の複製技術と共に発展しながらも、常に作家の個人的な世界を、伝統から最新技術まで広大な可能性へ誘う独自の役割を果たしてきたと言えましょう。そのような版画の面白さは、デジタル画像全盛の時代になっても、かえって人と技術の関係を再構築する役割をますます開拓していくように思われます。

文化を映す鏡

さらに、版画のもう一つの特性は、写真や映像に限らずあらゆるイメージを、編集したり、変化させたりといったことが得意な分野だという点です。おのずとこの領域には、イラストやデザインに似た、時代の文化を映し出す要素が可能性として横たわっています。本展に出品された多くの作品が、様々な作家自身の文化的背景を強く感じさせます。多元的なアメリカ文化のありようがそこに示されていると言うこともできるでしょうし、それはまた、版画領域の特性とも言えるものです。本展が、ただ版画の様々を紹介するだけで終わるのではなく、時代を映す鏡、それは他ならないアートの役割と言えますが、そのような視点から文化的対話としての展覧会体験が版画を通して生まれることを願っています。

主任学芸員 竹内 利夫
(徳島県立近代美術館ニュース No.66 掲載)


ゲスト・トーク 版画工房とコラボレーション

2008年8月17日[日]

版画工房における、作家とプリンターの共同制作はどのようなものなのか、現場のリアルなお話をうかがいます。講師は、本展で紹介している、アメリカを代表する版画工房タマリンドでプリンター修行をされた板津悟さんです。

【開催時間】午後2時から午後4時
【開催場所】徳島県立近代美術館 展示室3
【講師】板津悟(イタヅ・リトグラフィック主宰)
【主催者】徳島県立近代美術館
【参加対象】どなたでも




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